智子が教官室に戻るとさゆりはプールの授業でいなかったので、智子はPCに電源を入れて松尾のデータを参照することにした。
ログインして松尾という名前で検索すると表示されたデータを見て智子はビックリした。
「松尾先生の弟なの? 信じられない...松尾孝っていうのね...」
教師の松尾美佳がこの学園に来たのは弟の孝が入学する半年前である。本来であれば美佳は1年が経っているのでこの学園から解放されるはずなのに、そのままこの学園に居続けている。
(弟さんのことが心配で学園に残ったのね.....)
実の弟があれだけお仕置きに対して反対していれば、教師である姉の松尾美佳に対して何らかの罰則が科せられそうである。
「....彼はお仕置きは一度も受けていないみたいね....それじゃあ松尾先生も孝君のせいでお仕置きを受けたりはしてないのかもしれない.....」
智子は松尾孝のデータから、クラブには入っていない事と体育の授業は全て見学しているという事だけしか情報を得ることが出来なかった。
(さっき助けてもらったし、夕方にでも彼の所にお礼を言いに行こうかしら....)
「部屋は男子学生棟の621号室ね.....2年生と3年生の男子が個室で1年の男子と女子は相部屋なのね....こんなところでも女子を差別してるんだわ....」
その時に智子は、生徒の人数のことが気になった。
「たしか講堂で見たときには生徒は300人ぐらいしかいなかったわ....女子が6割ぐらいで....2年1組は30人ぐらいしか生徒がいなかったから.....1学年3クラスぐらいしかないの?」
智子はクラスの少なさに初めて気が付いた。
「いくらなんでも、それじゃあ教師の数が多すぎるんじゃないの?
智子は潜入する前に読んだ学園の資料の内容を思い出した。
「確かもう少し生徒の数が多かったわよね....とすると、全員が講堂に来てなかったという事なのかしら」
智子は教室に行ったのが2年1組が最初であり、それも遅刻しないように走って行ったので教室の数にまで気が回らなかったのである。
(とにかくおかしなところが多すぎるわ....脱出の際の障害になる可能性のあるものは的確につかんでおかなくては....もっと調べないといけないわね)
智子は今日はもう授業が無かったので、コンピューターで色々と調べてみようと思った。
部活に関しては部員名や活動報告などはデータとして存在していなかったが、予算と収支報告だけは探し出すことができた。
自分が部活巡りをすることになった6つの部を見ていると、1つの部だけ桁が他の部と2桁違う予算が計上されている。
「拷問研究部に何でこんなに予算が必要なの? それに予算が足りなくて追加で予算が組まれてるわ....どういうことなの、一体?」
それ以上の事は権限がなかったり、データ自体が見つからなかったりで、智子は20分近く使ったにも関わらずほとんど情報が得られなかった。
(やっぱり自分の足で調べるしかないのね....)

壁に掛かっている時計を見ると6時限目が終わるまで20分ほどの時間があった。
「どうせ授業がないんだから部屋に戻ってシャワーを浴びようかしら....下着も汚れちゃってるし....」
智子は岡本に怪しいクリームを塗られ、犯されたことを思い出してしまった。
「イヤな事を思い出しちゃったわ....早く部屋に戻ってシャワーを浴びなくちゃ」
智子はPCの電源を落とすと自分の部屋に戻り、シャワーを浴びた。
髪を洗い終え、身体を洗っている時に昨日剃った翳りの黒い先端がポツポツと毛穴から飛び出ている事に気がついた。
(ちょうど丸一日経ったぐらいね.....)
「そうだ、明日の朝.....私の部屋に来るんだわ.....」
明日の朝から今日の午前中の授業の時のお仕置きが開始されるのだった。 3年の男子生徒が毎日智子の下腹部を綺麗に剃りにくるのである。
(本当に毎日来るのかしら.....毎朝屈辱に耐えないといけないのね....でもまゆみちゃんと私自身のためにも我慢しなければ.....)
身体を隅々まで綺麗にすると下着を取り替え、改めて化粧をした。
授業中に教師が着替えているのが生徒達に知られるのはまずいと思い、ブラウスとスカートはそのままにして教官室に向かった。

教官室に入った直後に2年1組の木島が教官室に入ってきた。
「吉田先生!」
「何? あ、あなた!」
その時に初めて木島の顔を間近で見て、この生徒が教室で自分のブラジャーを外した生徒だということに気づいた。
「私は、木島美帆って言います。 さっき吉田先生に言われて教頭室に言ってきました」
「そ、そう....あなたが木島さんね....ねえ...まだ授業は終わってないでしょ、どうしたの?」
「教頭先生に吉田先生を呼んで来なさいって言われたんです」
「教頭先生が?」
「はい。 6時限目は斉藤先生の国語の授業なんですけど、変更するからって」
「変更? どういうことなの?」
「1組の担任が決まったので、急遽ホームルームにするそうです。 吉田先生と私たちが一日も早く仲良くなれるようにっておっしゃってました」
「そうなの.....でも斉藤先生は何て言ってるの?」
「私が教頭室に言ったら斉藤先生もいらっしゃったんですけど、それでいいっておっしゃってました」
「それで何をしなさいとか言ってたの?」
「いえ、全員の自己紹介ぐらいしか言われてないです」
「わかりました。 それじゃあ6時限目に教室に行くようにします」
「それでは、宜しくお願いします」
木島はペコリと頭を下げると、校舎に向かって走っていった。
担任になったクラスの生徒達と仲良くなるのは必要なことであるが、話が急であることと教頭が言い出した事が智子には気になって仕方がなかった。
(あの教頭の事だから、何か企んでいるかもしれないわ....気をつけないと...)
時計を見ると5時限目の授業が終わるまで、あと2分ほどだった。
「遅刻しないように早く行かないと....」
智子は4時限目の保健の授業の時に2年1組の出席簿を使わなかったことに気づき、教室に行く前に職員室に寄ることにした。
校庭の1/3ぐらいのところで5時限目終了のチャイムが校庭中に鳴り響いた。

職員室に行くとかなりの数の教師が仕事もせずにおしゃべりをしていた。
女性教師は普段は職員室には誰もおらず、男性教師だけの職員室は智子にとって危険な場所の一つになっていた。
そして今も女性教師は一人もいない。
智子には女性教師に仕事をさせて男性教師は遊んでいるようにしか見えなかった。
入り口の側にいる教師が智子に声をかけてきた。
「吉田先生、どうしました?」
「あのぅ....出席簿の場所をまだ聞いてなかったもので....普段はどこに置いてあるのでしょうか?」
「出席簿ですか? ドアの横にありますよ」
振り返るとドアの横に棚があり、クラス名が貼られていた。
(1学年4クラスしかないわ....1クラス30人としても360人しか生徒がいないことになる....なんでこんなに生徒が少ないの?)
「あっ! ここにあったんですか。 ありがとうございます」
ドアが開き、授業を終えた教師達が職員室に入ってきた。
2年1組の授業を終えた数学の西川の姿もその中にあった。西川は2年1組の出席簿を棚に入れようとして、側にいる智子に気がついた。
「吉田先生、2年1組の出席簿です。 4時限目の出席は取らなかったんですか?」
「は、はい....実は生徒の間でお仕置きがあったものですから、それどころではなくて....」
「そうだったんですか。 私はまた、吉田先生が遅刻しそうになって出席簿を忘れたのかと思いました」
智子は痛いところを突かれて、ギクッとした。 智子が言ったことも西川が言ったことも間違ってはいない。
出席を取らなかった事でお仕置きされるのではないかと内心ヒヤヒヤしている智子を尻目に、西川は出席簿を智子に手渡すと自分の席に着いてしまった。
そしてタバコを取り出すと美味そうに煙を吐き出し、隣の席の物理の鎌田とおしゃべりを始めた。
智子はチャンスとばかりに職員室から抜け出すと、2年1組のある3階を目指してゆっくりと階段を上っていった。