授業が始まる数分前には3階のフロアーについた智子だったが、廊下には誰もいなかった。
2年1組は階段の目の前なのでチャイムが鳴ってからでも十分に間にあう。
智子は中の様子を伺おうと後のドアに耳をつけたが、中はシーンとしていて誰もいないような感じだった。
ドアの上の小窓から中を覗こうとしても小柄な智子では、背が届かない。
(おかしいわね....誰もいないのかしら?)
ドアを細めに開けようとしたときに6時限目の始業のチャイムが鳴り出した。
智子は小走りに教卓側のドアの方に歩いていくと、大きく息を吸って力強く吐き出すとドアを開けて教室の中に入った。
生徒達は神妙な顔をして席に着いていた。 全員が智子の事をジッと見つめている。
(何なの、一体....)
「起立! 礼! 着席!」
席を立つ音と座るときの音がガタガタと教室中に響き渡る。 
智子は教卓の所に来ると生徒達を教壇の上から見回した。
「それでは6時限目を始めます。 教頭先生から国語の授業ではなくホームルームをするようにと指示がありました。 まず最初に自己紹介をしたいと思います。
 最初は私から....」
「待ってください!」
クラス委員の木島美帆が立ち上がって智子を制した。
「どうしたの、木島さん?」
「目上の先生が先ではなく、私たちが先に自己紹介するのが普通だと思います。 ですから、先生は私たちの後にお願いします」
「そ、そう...? 私はどちらでもいいけど....」
「それでは出席番号順に自己紹介してください」
男子生徒が待ってましたとばかりに勢いよく立ち上がった。
「相田健一です! 部活動はバスケ部に所属しています。 身長186cmです、以上!」
「葵直道です。 部活動はバレー部で、身長182cmです。 好きな女性のタイプは吉田先生みたいに小さい人です」
生徒達から笑い声があがった。
「ありがとう。 でも、そんなに大きかったらいつも上を向いていなくちゃいけないから、首が曲がっちゃうわね」
「井口栄です。 部活動には入っていません。 体重92kgです」
男子生徒が元気よく自己紹介をしていく。
「松尾孝です。 部活動はしていません。 身長は167cmです、以上」
(よく見ると松尾先生に似ているのね。 線が細い感じがするし、なんだか女の子みたい)
男子生徒達の自己紹介が続いていく。 男尊女卑の学校だけあって、出席番号は男子が先で女子が後になっていた。
「浅沼香です。 チアリーディング部に所属してます。 身長158cm バスト84 ウェスト60 ヒップ85です」
「ちょ、ちょっと! 身体のサイズなんて言わなくていいのよ」
「いえ、これは学園の決まりなんです。 女子は自己紹介する時はスリーサイズを言わないといけないんです」
「それも校則なの?」
「はい、校則です」
「続けます! 石崎さゆりです。 バレー部です。 身長168cm バスト83 ウェスト59 ヒップ87です」
「.............」
この学園に来てから2日だが、不条理を通り越して犯罪行為に近いものをたくさん見てきた。
女子生徒が自分のスリーサイズを大きな声で、当たり前のように言っているのは智子には理解できなかった。
女子生徒としてはスリーサイズぐらいでお仕置きをされてしまっては仕方がないということで言っているのだろうが、それにしてもあまりに普通すぎた。
「木島美帆です。 2年1組のクラス委員をやっています。 部活は拷問研究部の副部長をしています。 身長163cm バスト85 ウェスト58 ヒップ85です」
(拷問研究部....この娘が副部長?)
女子生徒の自己紹介が続いていく。
「岬まゆみです......部活動は拷問研究部です.....身長は164cm バスト84 ウェスト58 ヒップ85です....」
まゆみは他の女子生徒達と比べて極端に小さな声で自己紹介をした。
「山本真喜子です。 部活はバスケ部です 身長165cm バスト81 ウェスト61 ヒップ85です」
「吉田先生、以上です!」
「はい、ありがとう.....人の名前を覚えるのが苦手なんだけど、早いうちにみんなの名前と顔が一致するように頑張ります」
女子生徒は首にピンクのリボンを付けている。 ピンクのリボンは2年生の印なのであろう。
「それでは、吉田先生の自己紹介をお願いします」
「それでは改めまして、吉田智子です。 以前は東京の学校で体育を教えていました。 そのときは女子バスケの顧問をやっていたんですけど、学生の時は背が伸びるようにってバレー部に入っていました。 背が小さかったのでセッターしかやらせてもらえなかったですけど」
生徒達は一言も喋らずに真面目に智子の話を聞いている。
(へんな校則が無ければ普通なのよね.....)
「年齢はあんまり言いたくないんだけど、27歳です。 背が小さいからなのか童顔のせいなのかわかりませんが、年相応には見られたことは一度もありません。
 こんなところかしら....」
「先生、身長とスリーサイズを教えてください」
「え? 私も言わなくてはいけないの?」
「先生でも校則は守らないといけないんですよ。 先生も女性なんですから、ちゃんとスリーサイズを言ってください」
「校則だったわね....わかったわ....身長152cm バスト な、79 ウェスト57 ヒップ83 .....です」
「それでは一通り簡単な自己紹介が終わったので、吉田先生の事を更に詳しく聞きたいと思います」
「更に詳しく? どういう意味なの?」
「聞くというと語弊がありますね。 聞くんじゃなくて、見せてもらうんです」
「見せて....まさか...それって....」
「この学園には生徒用と教師用のデータベースのデータがあるのは吉田先生もすでに知っていると思いますが、この学園にいる全ての人たちは男性であれば顔と性器の写真、女性であれば顔と胸と性器の写真を寸法入りで登録しないといけない決まりになっているんです」
「まさか....それを今やろうというの....?」
「そのまさかです。 今までは教師の場合は直接の先輩か上司が撮影することになっていたんですが、今年から校則が若干変わって、着任してから1週間以内に担任するクラスがない場合は校長先生が、クラスがある場合はクラスの生徒達が学内システムのDBに登録する画像データの取得と細部の実寸値を計らなければならなくなったんです」
「イ...イヤよ....そんなの...」
「私たちはお披露目って言ってるんですけど、吉田先生にも私たちにお披露目をしてもらいます」
「わざわざ斉藤先生の許可を取ってまで6時限目の授業をなくしたはこのためだったの!」
「そうですよ。 でもこれは教頭先生の指示なんです。 吉田先生だって授業を始める前に教頭先生の指示でホームルームをやるって言ったじゃないですか。 ということは吉田先生もお披露目を受けることを教頭先生に指示されていたって事ですし、納得しているという事ですよね?」
「わ、私は教頭先生にそんな指示をうけていないわ!」
「それじゃあどういう指示を受けたんですか?」
「だって木島さん、あなたが....! も、もしかしたら、そういう意味だったって言うの?」
「もちろんですよ。 生徒達と仲良くなるようにって言ったじゃないですか。 
そして自己紹介をしなさいって。 裸になって全てを曝すことがこの学園でクラス担任になった先生の自己紹介であり、第一歩なんです!」
美帆の一言で大きな音を立てて運動部に所属している体格のいい男子生徒が数人立ち上がった。
「ま...待って...だめよ...そんなこと...」
智子はホワイトボードの方に後じさりしながら、ドアの方を横目で見る。
(ここで駆け出せば逃げ出せるわ)
今の智子にはこの場を逃げ出すことしか頭になかった。
すでに局部を写真に撮られ見られていたとしても、直接見られたのはさゆりと岡本だけである。
生徒達に見られることだけは避けたかった。 なんといっても同性の女子生徒にだけは惨めな姿を見られたくない。
智子は立ち上がった生徒の中で廊下側の生徒が前に出てくるのが若干遅いのを見て取ると、ドアに向かって駆けだした。
生徒達は智子が逃げ出すとは思っていなかったようで、生徒達の虚をついた智子はあっさりとドアにたどり着くことができた。
智子はドアを開け、廊下に飛び出した。
「キャアッ!」
廊下に飛び出したはずの智子が教室の中に転がり込んできた。
小柄な身体は床の上を転がり、結局智子は周りを男子生徒達に取り囲まれてしまった。
開いたドアの向こうには国語教師の斉藤が立っていて、まくれ上がった智子のスカートの中を見つめている。
智子は廊下に出たときにドアの外にいた斉藤に突き飛ばされたのだった。
男子生徒達は智子の腕をつかむと教卓の方に引きずっていく。
「や、やめて! 離して!」
「校則を破って逃げ出すなんて教師のすることじゃありませんよ、吉田先生。これはお仕置きですね」