(どうしてあんな夢を見たんだろう・・・・)
 いつもの教室、いつものように騒がしいクラスメイト。その喧噪の中で一人、先ほどの奇妙な夢について考え込んでいたのり子は、細い肩をぽんと叩かれ振り返った。祐子と真紀だ。

「どうしたの? 朝からブルーな感じに浸っちゃってさ?」
 と真紀が声をかける。
「うん、別になんでもないわよ」
「さては、あの日だなあ・・・・って冗談よ、冗談」
 いたずらっぽい問いかけをした祐子は、のり子に睨まれて、あわててそういう言い訳をする。そんな会話の途中で、先生が入ってくるのを見て、みんな急いで席に戻る。真紀は、ふと担任の冴島の後ろから見慣れない青年が入ってくるのに気付いた。

 黒板の前に立った冴島が隣の青年を紹介しながら、
「みんなよく聴けよ! こちらは、今日からこのクラスで教育実習を行うことになった広永君だ」
「皆さんはじめまして、広永啓介といいます。二週間ほどの短い付き合いになると思いますが、どうかよろしくお願いします」
 ぺこりとおじぎをしながら、紹介された青年が自己紹介する。その途端に、教室のあちこちで品定めが始まり、慌てて先生が静かにさせようとしているのが見える。

 興味津々といった感じの祐子は、
「へー、なかなかいい男じゃない? そう思うでしょ、真紀」
「そうかなあ・・・のり子はどう思う?」

 真紀からそう話をふられたのり子であったが、それに答えることが出来なかった。広永と名乗った青年に目が釘付になってたからである。

「誰なの。見たこと無いはずなのにどこかで会ったことあるような・・・嫌な感じがする・・・」
 頭の中に自分とは別の誰かが住み着いたようなそんな感触を覚えた途端、意識がブラックアウトする・・・

「のり子!」

 急に椅子ごと倒れてしまったのり子を見て真紀が悲鳴をあげた。ざわついていた教室がさらに混乱の極みに達し、その中を冴島と広永があわててそばに駆け寄ってくる。

「おい、大丈夫か、高橋!・・・だめだ完全に気を失ってる。おい、はやく高橋を保健室につれていくんだ」
 のり子を助け起こして頬を少したたいたりしていた先生も、あきらめたのか保健委員にそう告げる。呼ばれた生徒が運ぶためにのり子を起こして肩にもたれ立たせた拍子に、あの誕生日プレゼントのペンダントが胸元からちらりと顔をのぞかせる。

「どうしたんですか、広永先生? 顔色が優れないようですけど?」

 真紀は、広永がペンダントを見て顔色を変えたのに目ざとく気付いて、そう尋ねる。
「いや・・・べ、別にたいしたことじゃないんだ。ただ、見たことあるペンダントに似てるかなって思って・・・気のせいかな、たぶん」
 真紀は、苦し紛れにも似た笑いをうかべる広永をじっと見つめていた。