「ほらほら、祐子。ぐずぐずしないで! あいつを取り逃がしちゃうじゃない」
「大丈夫だって、そんなにあせらなくても」

 あれから小一時間。真紀と祐子の姿は、学校から電車で二駅ほどの繁華街の中に会った。あの実習生、広永の後をつけてきたのである。

「真紀、真紀ってば! なんであいつの後なんかつけなきゃなんないのよ?」
「のり子が倒れたのは、あの男を見たからなのよ。絶対何か関係あるわよ。広永の方の様子だって普通じゃなかったもの。」
「あいつとのり子が知り合いだっていうの?」
「うーん、そこまでは言い切れないけど・・・ほら! あいつ、あの店の中に入っていくよ!」

 レストランに入っていく広永を見て、二人も慌てて後を追いかける。
「いるいる」
 入り口近くの席に陣取った二人は、カウンターに座っている広永を見つけてそうつぶやく。
「どう、あいつの様子は?」
 広永がいる方に背を向ける形で座った祐子が、後ろを振り向きたいのを我慢できないようにそう尋ねる。
「うーん、なんだか人を待ってるみたいね・・・ただ、相手の人がちっとも来ないのでいらいらしているみたい・・・・あ、こっちに来る!」

 ちらちらと広永の方をうかがっていた真紀がそう言うのを合図に、二人は慌てて見つからないように顔を下げる。

「な、なに、もしかして見つかったの?」
「しっ! 違うみたい・・・電話かな?」

 レジの方向に歩いていく広永を横目で追いながら、真紀がそう答える。広永は、どうやら待ち合わせの相手に電話をしているらしく、少し怒ったような声で話している。
「・・・おい、なんだよ・・・なに・・・ああ、わかった・・・」
 何かメモを取りながら電話をしていた広永は、そう言って電話を切る。レジで会計をすませ店を出ていくのを目で見送りながら、真紀が慌てて席を立つ。

「どうしたのよ、急に?」
 小走りに電話のところに行って戻ってきた真紀に向かい、祐子がそう声をかける。
「うん、これよこれ。広永の奴、何かメモを取ってたでしょ。その跡が次のメモ用紙に残ってないかと思ってね・・・もう、ばっちり! どうやら、どこかの住所みたいね」
「それでどうするの?」
「何言ってるのよ! もちろん、追いかけるのよ」