彩子は、ふぅ、と溜息をついた。
 また今日もいつもと変わらぬ一日が始まってしまった。
 朝6時に起床。夫を送り出した後、洗濯、掃除。昼食後にテレビのワイドショーを見
ながら昼寝を少々。夕方から買い物に行き、夕食の支度をしつつ夫の帰りを待つ。
 変化のない日常。退屈な毎日。
 昼前に掃除を終わらせてなんとなく一息ついていた彩子は、ふとこれまでの自分の生
活を振り返った。
 22歳の時に親の反対を押し切って、駆け落ち同然に結婚。それから早いもので、も
う5年になる。子供はまだいない。今日まで、がむしゃらに生きて来たような気がする。
 昨年やっとの思いで公団マンションを購入した。それを機に仕事をやめ、家事に専念
するようになった。別にやめたくて辞めた訳ではない。保守的な夫は、妻には家を守っ
ていてほしいのだそうだ。自分が仕事から帰ってきた時、毎日迎えに出てほしのだそう
だ。
 そんな夫の考えを受け入れてしまったのが間違いだった。
 変化のない日常。退屈な毎日。
 退屈、退屈、退屈。
 去年まで家庭を持ちながらも、バリバリと仕事も遊びもこなしてきた彩子にとって、
一日中家にいて、毎日同じことを繰り返すことはどんなに苦痛なことだろう。
「あぁ、なにか刺激的なものが欲しいわ・・」
「この、退屈な日常をを壊してくれる刺激的な出来事が・・・」
 ここ数日、そんなことばかり考えるようになった。
 なんとなく毎日見る、ワイドショー、たまに買ってくる女性週刊誌からは、人妻の乱
れた性の情報がひっきりなしに入ってくる。
 不倫、不倫、不倫。
 別に夫に満足していないわけではない。夫は求めれば応じてくれる。向こうからも求
めてきてくれる。結婚して5年、そろそろ夜の生活もマンネリになりつつあるかな?と
も思うようになってきたが、同年代の夫婦と比較してみれば充実していると思う。
 でも・・・
 すべては、退屈な日常がいけないのだ。
 変化のない生活に麻痺した体がもっと刺激を求めてくる。それも、いけない刺激と言
うかたちをとって。
 年令も27歳。一番脂ののっている時期である。欲求をいくら満たそうとしても、満
たしきれない。
 わたしって淫乱だったのかしら?
 誰もいない昼間、ひとりでオナニーにふけることも多くなってきた。夫に内緒で、大
人のおもちゃも買ってしまった。そんなことを夫に知られてしまったら、何を言われる
ことか。でも、その秘密がたまらなく快感だったりする。
 わざと夫の帰る時間の直前にオナニーを始めて、そのスリルを味わったりしたことも
ある。
「わたしも乱れた人妻のひとりね・・・」
 最近では開き直りにも似た考えが頭を巡るようになった。 わたしは淫乱な人妻・・・
 なんでもいい、淫靡な刺激を求めるケダモノ・・・
 昼食の用意までには、まだ少し時間があった。どっちにしろ、ひとりだけの食事の用
意だ、どうでもいい。
 ソファーに寝ころんでぼーっとテレビを見ていた彩子は、そんなことを思い返してい
くうちに、だんだんと体がほてってきているのに気づいた。
 言ったそばから、体が刺激を求めてきた。我慢できそうにない。
 んもう、昼間から・・・
 ちょっと罪悪感にさいなまれながら、おもむろに箪笥の奥に隠してあるバイブレータ
を取り出す。夫の名前を使って、通販で買ったものだ。
 バレたらすごく怒られるだろうな。
 寝室のベットに寝転がった。
 ちょっとためらいながらスカートを脱ぐ。恐る恐る、指でパンティーの上から秘部を
まさぐってみた。
「ああ・・・濡れてる・・・」
 パンティーにはそれとわかるシミがついていた。
「まだなにもしていないのに・・・」
 周りには誰もいないのに、なぜかとても恥ずかしくなり、顔が真っ赤になった。その
羞恥心が、さらに体に熱を持たせる。
 ゆっくりとパンティーを脱いだ。膝をたてて、そっと太腿に指を這わせてみた。指の
刺激が太腿を通して最も敏感な部分に伝わる。
 太腿をさわっているのに、膣の奥の方を愛撫しているような感覚に落ちる。
 私ってこんなに敏感だったかしら?
 指はもったいぶるかのように、秘部を通過し、その上の茂みをまさぐった。ゆっくり
と手の平で包み込んでみる。自分の手の温かさが伝わってくる。
 なんか変な感じ。
 わずかにためらいながら、敏感になっている秘唇を触ってみた。
「ん・・・」
 快感が体全体に広がる。
 即座にねっとりとした愛液の感触が感じ取れた。
 痺れるような快感をたのしみながら、さらに指を下の方に這わせてみた。
「あ・・・・こんなに・・・・」
 愛液はすでに小さな蜜壷から溢れ出し、おしりの方まで 流れていた。
 自分の愛液をたっぷりと指につけ、ゆっくりと肛門の周囲を刺激してみる。
「ああぁっ! んん・・・・」
 思わず声が漏れてしまった。しかし淫靡な快楽の世界に身を埋めかけている彩子は、
すでに現実世界から遠く離れてしまっていた。
 自分が声を出していることにも気づかない。
「はぁぁ・・・あんっ!・・・ああ~っ!」
 指の動きが早くなる。
「だ、だめぇ~・・・」
 もう、すっかりと快楽の暗闇の穴の中に落ちてしまった。
 虚ろに目を開き、枕元に置いてあるバイブレーターを手にする。黒光りする太いそれ
のスイッチを入れる。モーターの音が静かに響く。