「あ、ありがとうございます。待たせていただきます」
 青年は助かったというような顔をして玄関に入った。外はよほど暑いのだろう。
 玄関に入った青年は、彩子の着くずれた格好を見てゴクリと唾を飲み込んだ。ノーブ
ラの上に薄いブラウス、下はインナーウエアのタオル地のショートスカートという格好
である。スラリと露出された白い太腿が生々しい。
 台所に入っていく彩子の後ろから、視線が絡み付くのが感じられた。
 ふふ・・・やりたい盛りの青年って感じね。
 誘ったら乗ってくるかも・・・
 ・・と、その前にまずは荷物受け取らなくちゃ。
 彩子は台所に入ってハンコを探した。しかしなかなか出てこない。引き出しの中を探
しながら玄関に向かって声をかけた。
「印鑑が見当たらないわ、ごめんなさい、忙しいのにお時間取らせちゃって。」
「いえ、ここの配達が最後ですから。あ、サインでも結構ですよ」
 玄関から返ってきた返事の内容に彩子はピクリとした。
 またいけない考えが頭の中にむくむくと沸き上がってきた。
 と、そのとき引き出しの奥から印鑑が出てきた。
 印鑑を握りながら彩子は考えた。
 ここが最後ってことは、もう仕事は終わりなのね・・・。向こうもわたしの体に反応
していたみたいだし・・誘ったら乗ってくるかしら・・・。でも・・いきなり見ず知ら
ずの女の人に声かけられてもびっくりするわよね・・・。
 まだ印鑑を探すふりをしながら彩子の心は葛藤を演じていた。
 ああ・・・でも・・・。
 青年の太い腕を思い浮かべると股間がうずく。絶頂の間際で快楽のエサを断たれた彩
子の濡れそぼった花芯は、理性を押し殺さんとばかりにさらなる快感を求めている。
 だめならだめでいいわ、ちょっとカマかけてみようかしら・・・。
 欲望が理性を、羞恥心を上回ってしまった。
「あ、あったわ」
 玄関に向かって言った。
 印鑑をもって台所を出る前に、彩子はブラウスのボタンをもう1つ外した。さらに胸
がはだける。冷静に考えたらとんでもない格好で出てきたものだ。まあ、急いで出てき
たからしょうがないが。今となってはこれも好都合だ。
 宅急便の青年は、帽子を取って玄関に立っていた。さっぱりした短髪のいかにもスポー
ツマンといった感じの青年である。
「ごめんなさいね、お手間取らせちゃって」
 玄関に向かって歩きながらもう一度言った。
「いえ、これで仕事は終わりなんです、あとはそこらで一休みして事務所に戻るだけ
 ですから」
 青年は僅かに緊張したおももちで微笑みながら言ったが、視線が一瞬彩子の胸元に行
ったのを彩子は見のがさなかった。
 差し出された伝票を受け取った彩子は、ハンコを押すためにわざわざ跪いて伝票を床
に置いた。
 青年からは彩子の胸の谷間がモロに見える筈だ。胸に舐めるような視線を感じ、ハン
コを押しながら彩子は言った。
「そう、ご苦労様。そんなに急がなくてもいいのなら、冷たいモノでも御馳走するわ。
 暑い中、わざわざ階段のぼって届けに来てくれたお礼」
 ハンコを押した伝票を渡す時、「あなたを誘っているのよ」と言わんばかりにわざと
青年の手を取って渡した。
 青年は知ってか知らずか僅かに体がこわばった。目線は自分の足元と彩子の胸元を行っ
たり来たりしている。
「あ、ありがとうございます、で、でも・・」
「そんなに遠慮なさらないで。ちょっと待っててね」
 彩子は台所に戻りながら心の中で微笑んだ。
 私のこと意識してるわ・・・・ふふ・・
 もう一押しってところね・・・
 なんとかして部屋に引きずり込めないかしら。
 彩子はもう獲物を狙う一匹の雌蜘蛛と化していた。
 台所に戻り、冷蔵庫からアイスコーヒーを出して、氷を入れたグラスに注いだ。それ
をお盆にのせ、玄関で待っている獲物の所に運ぶ。
 獲物を誘う甘い蜜だ。
 誘いに乗ってくれれば、もっと甘い蜜を吸わせてあげるわよ・・・そんな雰囲気を漂
わせながら玄関に戻った。
「さ、ちょっと休んでいってね」
 お盆からグラスを手に取り、青年に渡そうそする。
「ありがとうございます・・」
 青年が受け取ろうとした瞬間、彩子の手からグラスが離れた。
「あっ」
 バシャッ。
 パリーン!
 アイスコーヒーが青年の股間にかかり、グラスは玄関に叩き付けられて破片が飛び散
った。
「ご、ごめんなさいっ」
 思わず青年が謝った。手で股間にかかったアイスコーヒーを振り払う。
「私が悪いのよ、ちょっと手を滑らせちゃって。ご、ごめんなさいね。あらぁ、濡れ
 ちゃったわ、ごめんなさい、どうしましょう」
  彩子は慌てたそぶりを見せて、ぱたぱたと駆けてタオルを取ってきた。
 しゃがみ込んでコーヒーでびしょびしょになった作業服を拭く。
「ああ、ごめんなさい、こんなにびしょびしょになっちゃって・・」
  股間が彩子の目の前にあった。盛り上がりが手に感じ取れる。
「ホントにごめんなさいね」
 当然ながら、タオルで拭いたぐらいでは股間に広がったシミは取れない。一通り拭き
終わってもまだ丁寧に撫でるように拭く。
 びっくりして逃げ出すかなと思ったが、青年はなすがままになっていた。
 やっぱり・・・これは落とせるわ・・・
 今度はタオルを通してではなく、直に手で股間の盛り上がりを撫でてみる。
 ちらりと青年の顔を見る。
 こちらの意図するところが薄々わかったのだろう。と言うか、ここまで露骨にやって
わからない方がおかしい。少し脅えながらも、何かを期待するような目でこちらを見て
いた。
 彩子は微笑んだ。
「もう仕事終わりなんでしょう? 乾燥機があるから1時間程で洗濯できるわ・・」
「は、はい」
 優しく股間を撫でる。
 心持ち先程より大きくなったようだ。
「ね・・1時間・・・休んでいって・・・。わかるでしょう?・・」
 その1時間の間に、あなたの期待することがあるわよ、と言う意味だ。
「は・・い・・・」
とうとう獲物は蜘蛛の巣にかかってしまった。
 そうよね・・・この暑い中、汗まみれで仕事して、もう少しで仕事も終わる・・そん
な時にあられもない姿の女に誘われちゃ、男、それも血気盛んな男だったら誘いに乗っ
ちゃうわよね・・・私が男でこんな状況にあったら、絶対誘いに乗っちゃうわ・・・
 心の中で青年の行動を正当化してやる。
 いけないのはあたしなの・・・ごめんね・・・。
 あたし? だってあたしは快楽を求めるケダモノだもの・・・。そう、理性のタガが
外れた獣、網を張って待ち構える雌蜘蛛・・・。
 ふふ・・・でも、こんなのビデオやマンガの中の話だけだと思ってたわ・・・ 。
「とりあえず洗濯しなくちゃ。それ脱いで」
 クーラーの利いた居間に入って来て、彩子は言った。
 自ら誘いに乗ったとはいえ、青年はまだ恥ずかしそうである。突っ立ったままもじも
じしている。
 彩子が声をかけた。
「ごめんなさいね・・突然こんなことしちゃって・・・単なる遊びだと思って。ね?
 それとも、やっぱりこんなオバさんとじゃ嫌?・・」
 青年はビクッとなって答えた。
「そんな、オバさんだなんて全然思ってないです!とっても若いしキレイだし・・・
 ただ・・やっぱりこんなことしちゃっていいのかな・・と・・」
「あら、だってわたしが誘ってるのわかったでしょ?」
「ええ・・なんとなく・・・」
 ちょっと罪悪感が芽生えたのだろうか。
 彩子はわざと陽気になって言った。
「ふふふ・・・ごめんなさい、コーヒーこぼしたのわざとなの」
「え、ははは・・いや、なんとなくそんな感じしてました」
「あら、ばれちゃってたのね。うふふふ・・・」
「やっぱりそうでしたか。へへ・・」
「君がちょっとかっこよかったから・・いけない女ね、わたしって」
「はははは、そうっすね」
 心持ち、緊張感が解けてきたようだ。
「わたし彩子。君、名前は?」
「浩一です」
「浩一君か、何歳?」
「19です」
「19歳か~、若いわね。わたし何歳に見える?」
「え・・・・え、と、23ぐらい?」
「きゃ、うれしい。そんなに若く見えるんだ」
「え? それじゃ・・・」
「残念でした。わたし27よ」
「え! とてもそうは見えない・・・」
「ふふふ・・・」
 事実彩子は歳に比べて童顔である。といってもかわいらしいわけではない。童顔であ
りながら、歳相応の落ち着きと美貌も持っている。不思議な美しさだ。体の方も学生時
代はスポーツで鍛えていた。最近は暇潰しにスポーツジムにも通っている。程よく引き
締まり、なおかつ熟れた体だ。
 その熟れた体が、際限なく男を欲しがっている・・・
 バスタオルを用意しながら彩子は言った。
「ねえ、どうして私の誘いになんか乗ったの?」
「え・・・いや・・彩子さんキレイだったし・・・暑くてイライラしてて・・もう、
どうにでもなれ!って思っちゃったし・・・。俺、一カ月前に彼女と別れて、なんか欲
求不満だったし・・へへ・・」
「そうなんだ・・ま、遊びだと思って気楽に、ね?」
「はい」
「さ、それじゃ服脱いで。早くしないとシミが落ちなくなっちゃうわ」
 彩子がせかした。
 浩一はまた戸惑った様子だったが、意を決したように作業服を脱いだ。
 若い肉体が露になった。
 彩子の体のなかのケダモノがウネウネと疼きだした。
「体も汗とコーヒーでベトベトね。シャワー浴びてらっしゃいな」
 バスタオルを手渡した。
「はい、そうします」
 浩一は素直に従った。
 浩一をシャワーに案内し、作業服を洗濯機にほうり込んだ。
 浴室からはシャワーの音が聞こえてくる。
 浴室の前で彩子は服を脱いだ。
 あ・・・
 パンティーを脱ぐと、一瞬透明な液体が糸を引いた。
 まだこんなに濡れてる・・・
 そおっと中の方を触ってみた。
 熱い・・・・
 蜜の洪水・・・
 早くこの体の疼きを押さえて欲しい・・・
 一糸まとわぬ姿でそっと浴室のドアを開けた。