「縛るわよ、痛かったら言ってね」
 大の字になった浩一の手首、足首にビニールひもを巻き、それぞれをベッドの四隅
の足に縛りつける。これで浩一はもう身動きできない。ぶざまに大の字にベッドに縛りつ
けられてしまった。
 しかし、それだけで興奮したのか、浩一の腰に巻かれていたバスタオルが見事にテント
の形状を作っていた。わずかにピクン、ピクンと脈打っている。
 彩子がそれを見つめた。
 ああ・・・
 一度だけ夫の自由を奪い弄んだ時の、あの狂おしいばかりの興奮と快感が鮮明に蘇って
くる。股間が湿気を帯びているのが分かる。
 あぁ・・・そう、この感覚よ・・・
 溶けてしまいそうな興奮が身体を包み込む。
「大丈夫? 痛くない?」
「ええ、平気です。な、なんかすごく興奮する・・・」
「でしょ・・・わたしもそうよ・・・。ね・・わたしね・・もう濡れてるの・・・」
 そう言うと彩子はベッドに上がり、浩一の顔をまたいで立った。
 間近にベッドの沈みを感じて浩一の身体が一瞬こわばる。見えるはずはないのに必死に
目を凝らそうとする。目隠ししていなければ顔の真上に彩子の蜜をたたえた秘部が見える
であろう。
 相手が目隠しをしているので、何をやっても恥ずかしくないような気がした。
 浩一の顔の上で仁王立ちしたまま、彩子は自らの身体を巻いていたタオルを取り払っ
た。自分の茂み越しに目隠しした浩一の顔が見える。
 自分の両手を自らの秘部に近づける。
「ね・・・浩一君、聞いて・・・わたし、もうこんなになってるのよ・・・・」
 左手で茂みをかき分け、敏感な部分を守っている肉壁を開く。そして右手の指を濡れた
部分に這わす。
 浩一の頭の上で、ピチャピチャという淫らな音が聞こえてきた。
 浩一の身体の一部を支柱にして作られたテントがさらに高くなった。先端にシミが出来
ている。
「あふ・・・ん・・・・」
 彩子が手淫に没頭し始めた。泉がさらに湧きかえり、淫音も大きくなる。ピチャ、
クチュ、という音が部屋に響く。
「ねぇ・・・聞こえる? エッチな音が・・・・すごいでしょ? こんなに・・・」
 浩一の息が荒い。五感のすべてを耳に集中するかのようにして、彩子の身体が発する
淫らな音を聴く。
 ふと、その音がだんだんと近づいて来た。
 彩子が、手の動きはそのままで浩一の顔に向けてゆっくりと腰を下ろしてきたのだ。
 近づくとその音がよりリアルに響く。
今や目の前で毛が擦れる音、そして蜜をかき回す音が聞こえる。彩子が洩らすせつなげな
吐息も間近に感じる。
「あ、彩子さん・・・オレもうこんなの・・・もう我慢できないよ!」
 聴覚を極限にまで刺激させられた浩一がたまらず悲鳴をあげる。身悶えようにも手足が
動かず、それがさらに浩一の理性をかき乱す。
 この哀願が今の彩子にとっては至福の響きだ。
 そう・・・もっと悶えて・・もっとお願いして・・・
 男を征服する悦びが身体中に広がる。
 意地悪そうに彩子は言った。
「ダメよ、だってまだ始まったばっかりじゃない。あなたはされるがまま、なにもし
ちゃだめよ」
 そう言うと彩子は不意に浩一の顔に腰を下ろした。
「むぐ!」
 口が塞がれた。浩一の唇の周りに生温かい肉の感触と、ねっとりとした粘液の感触が広
がる。
「苦しい? 我慢してね」
 彩子は浩一の頭の両脇に両手をついた。ちょうど、ちょっと腰をあげた犬座りのような
格好になる。彩子の淫らな唇と浩一の唇がキスをしている。彩子の陰毛と、さらには淫靡
な香りが浩一の鼻をくすぐる。
「顔を動かさないで、なにもしちゃダメよ、口もそのままよ」
 そう言うと彩子は腰を静かに前後に動かし始めた。浩一の唇の上を彩子の熱を帯びた花
唇が、ぷっくり膨らんだ肉芽が、愛液で濡れそぼった茂みが、ゆっくりと順番に行き来す
る。上の唇と下の唇のディープキス。唇同志が擦れるたびに、チュプッ、ピチャッと音が
する。その音がさらに浩一の脳を刺激する。今度は触感も伴ってだ。
 彩子は身悶えながら必死で耐える浩一を見て優越感に浸りながら、摩擦によってとめど
なく送りこまれる快感に身を委ねていた。浩一の鼻息が微妙に敏感な部分を刺激する。
 ん・・・あぁ・・・
思わず声が洩れ、腰の力が抜ける。と、その時、
「きゃひ!」
 不意に彩子が叫び腰を浮かせた。
 辛抱出来なくなった浩一が舌を差し込んできたのだ。舌は浅いながらも濡れた彩子の肉
壷を的確に貫いた。
「んもう、何もしちゃだめって言ったでしょ。どうしてわたしの言うことが聞けないの?
それともここで終わりにする?」
「そんな! だって我慢出来なかったんだ。なにもしないでじっとしているなんてそん
な・・・」
 浩一は目隠しされ、身体をベッドに縛りつけられた状態で、情けない声で精一杯言い訳
した。口の周りが彩子の愛液でヌラヌラ光っている。
 こんな所でやめられてはたまったものではない、まさに蛇の生殺しだ。さんざん刺激さ
せられて、それも直接的な刺激ではなく、音感と触感によって理性を破壊された浩一にとって、それは地獄に落ちるにも勝る苦痛であった。
「続けてほしい?」
 彩子の意地悪な攻めが続く。
「う、うん・・・このままじゃオレ・・・」
「じゃ、お願いするのよ。『これからは彩子さんの言われた通りにします、何でも言う
ことを聞きます。だから続きをしてください』って」
「う・・それは・・・」
「言えないの?」
「だって・・・そんなこと・・・」
「あら、まだ立場がわからないのね、それじゃ、この遊びは終わりにしましょう」
「待って! 言う、言います・・・だから・・・」
「じゃ早く言って」
「・・・・・・・・・・・こ、これからは彩子さんの言われた通りにします、何でも言う
ことを聞きます。だから・・続きをしてください・・・お願いします・・」
 彩子の言葉を気軽に受け入れてしまったことへの後悔の念、それでも快楽を求めてしまう自分の欲望に対する不信感、女に服従する心地よさ。羞恥心、不安、快感、期待。あらゆる感情が心に渦巻く中、浩一はついに淫魔との契約の呪文を口にしてしまった。しかも身体の自由を奪われている状態で・・・
「ふふ・・・いい子ね。許してあげるわ」
 もはや浩一は、「彩子」という真っ暗な奈落の底に完全に落ちてしまった。この底無し沼から這い上がることは出来るのだろうか。