ユウミはもう排泄恐怖症寸前。お仕置きのピアスの傷が、治っていない。オシッコをするたびに、ラビアに沁みる。それに、念のために化膿止めの薬を飲んでいるから、眠くてしょうがない。
会社のトイレでも消毒したりして、もたもたしてるから時間がかかる。今も、さんざん緊張してトイレを済ませてた。席に戻った途端、経理のおばちゃんのイヤミ。
「ユウミさん!トイレ長すぎるんじゃないの!タバコなんか吸ってサボってるんでしょ。まったくもう、ちかごろの若い子ときたら!遊ぶことしか考えないんだから」
こんな時は、適当にあしらうに限る
「あ・・済みません。ちょっと体調が悪くて・・」
「あら、お腹の調子が悪いんなら、正露丸でも飲めばいいじゃない」
ああ、やだやだ、おばちゃんデリカシーが無いんだから。
オオタが、すまなそうな目でユウミを見た。悔しさ紛れに無視した。
昼休みになったが、ユウミは食欲がない。気分転換もしたっかたし、外に出ることにした。靖国通りを東に歩いて、伊勢丹に入った。エレベーターで屋上に出る。新宿の真ん中とは思えないぐらい、ゆったりとしている。
子どもたちがペットショップの人工池で、金魚釣りをしている。お弁当を広げているOLのグループがいる。週末は混んでいるのだろうが、ウィークデイのお昼は、のんびりと静かだ。
ユウミは数段高くなった西洋式庭園風のベンチに座った。風がさらさらと心地よい。まとめていた髪をほどき、風にあてた。気持ちいい。膝を開いて、スカートの中にも風を入れる。下のヘアーがチロチロ流れて、くすぐったい。パンティを履いていたら、こんないい気持ちは味わえないんだなぁ。ユウミは両手を上げて、思いっきり背伸びして、上半身を傾けた。
ふと、誰かの視線を感じて座りなおすと、正面の階段の下から、くたびれた感じの、紺のスーツを着たオジさんが、じっとユウミを見つめている。あそこから、スカートの中が覗けるのかしら?ユウミは立ち上がって、階段の真上まで移動した。下からのオジさんの視線は、ユウミの太腿あたりに張り付いている。
ユウミは両手を腰に当てて、足を開きまっすぐに見下ろす。オジさんは中腰になって、階段の真下にもそもそ移動してきた。泣いているのか笑っているのか、妙に表情が歪み、上目遣いにスカートの中を覗き込もうとしている。
そんなに見たい?見せてあげてもいいけど・・でも、何でそんなに卑屈になるの?女の股ぐら見たからって、オジさんの人生が変わるわけじゃないでしょ。でも・・あれれ・・何だか、ムズムズしてきちゃった。
ユウミは膝を曲げて、そのまま腰を落とし、奥まで見えるようにした。白昼堂々、デパートの屋上でかなり大胆!遠くで子供の歓声が上がった。母親を呼ぶ幼児の声もする「ママーッママーー」
ユウミはオシッコ座り寸前で、元の姿勢にもどる。オジさんはハッとして、ユウミを見上げる。片足が段にかかって、さらにユウミに近づこうとしている。ユウミとオジさんの目があった。
「あの・・お嬢さん・・・」
オジさんが階段を昇りながら、声をかけてきたが、すぐに口ごもってしまった。
ユウミはオジさんに背を向けると、足早にエレベーターホールへ向かった。追ってくる気配を背中に感じる。エレベーター横のひと気のない階段を降りた。丁度、踊り場まで来たときに、オジさんが追い付いて、ユウミの背中に手をかけた。それを払うようにして、ユウミが振り返った。
「何かご用かしら?」
「エヘヘ・・何かご用って・・あんた、したいんだろ?ノーパンで、丸見えだったよ。幾らだ?それとも、ただでさせてくれんの?」
オジさんは人目が無くなると、態度が一変。ユウミのポンとした胸に触ろうと、手を伸ばしてきた。
ユウミは、オジさんを思いきり突き飛ばし、フラフラと重心を失ったオジさんの股間に、強烈な蹴りを入れた。
気持ち良いぐらい決まった!
「うげっ」
うめき声を上げて、オジさんがへたり込む。
「調子に乗ってはいけませんことよ。何事にも限度がございますのよ。見るのはいいけど、触るのはダメ!」
ユウミの声が、階段ホールにこだまする。
床に転げまわって、悶絶するオジさんをそのままにして、ユウミはヒールの音を響かせて下へ降りた。
はぁ、スッキリしちゃった。お天気が良くて、風が気持ちよかったからかしら。お腹も空いてきたし・・。ユウミはKFCで、めいっぱい脂ぎったフライドチキンを3つ食べた。
ユウミが会社に戻ると、昼休みの時間は、とっくに過ぎていた。ちょっと、まずいかな・・。案の定、経理のおばちゃんが
「ちょっとーユウミさん!今、何時だと思ってるの?休憩時間はとっくに過ぎてますよ!いい加減な人ね」
それから、見て見ぬ振りをしている、オオタに向かって
「社長!甘やかし過ぎですよ。チャンと言っていただかないと、困ります」
オオタは、聞こえない振りをするしかない。
「社長!まったくもう!どうなってんの、この会社は!」
おばさん、ついに切れちゃったかな。
「ごめんなさい。時間に遅れちゃって・・。あ、おばさんに丁度合いそうな男性が、伊勢丹の屋上にいましたよ。ストレス溜まっている者同士で、まぐわっちゃえば?」
「ま!なんてこと言うのーー!お、お下劣な!・・・しゃ、社長、何とか言ってくださいよ!」
オオタは下を向いてしまった。
夕方、サカイが営業から戻ってきた。
「ユウミさん、経理のおばさんと何かあったんですか?むちゃくちゃ、機嫌悪かったですよ」
「う、うん・・まあね」
「だめですよ、更年期のご婦人をからかっちゃ」
「サカイ!生意気だなぁ・・そんなこと言うなら、食事おごらせちゃうよ」
「アハハ、願ってもないお言葉。何でも好きな物おごりますよ」
ユウミとサカイが、連れだって退社する後ろ姿を、オオタの視線が追っていた。