私に対する。エッチないじめがその日から始まった。
今日であれから一ヶ月。
「松原、しかたないから新しい通知票作ったから、どっかで紛失したにしてもこ
れからは無くしたりするなよ? いいな」
始業式から一週間後、通知票は見つかった。
それも…
私の家に封筒に入れて送られてきたのだ。
通知票自体、もう使えないほどめちゃくちゃに引きちぎられていた。
「……はい」
腹立たしく思いながらもうなずくしかなかった。
あれから、無くなったと先生には言い通して、新規に作ってもらう事になったの
だ。
おかげで毎日のように先生に呼び出された。
それだけではない。
誰一人、私に話しかけないばかりか、最近では私が話しかけても無視して通って
いくようにさえなった。
椅子にガムがひっつけてあったり、ノートに「親友の彼氏を奪う最低な女」とか
書かれたこともある。でもそんなことが加代子以外の子にどんな関係があるのか
分からない。
もしかしたらただの理由なのかもしれない。
あの加代子でさえ、呼び止めても毎回用事がある。
こないだたまりかねて、加代子を呼び止めて、また用事だという加代子に、なん
の用事か徹底的に聞いてみた。
そしたらやっぱり答えれないのか、ささっと何も言わずに走りさって逃げるよう
にいなくなった。
最近は、私の顔を見ただけで隠れてさっといなくなるくらい、露骨に私を無視し
てかかる。
その変わり帰り道は多少にぎやかになった。
それというのも雅之が、大抵は私の帰りをまっていてくれて、一緒に帰れるから
だったりする。
先生に呼び止められるか、さもなくば、友達に引っかかっている私を待っていて
くれるのだからありがたいと思う。
最近は頼りになるのが雅之だけになっている…
雅之と私は、同じ電車で通学していて、私のが少し遠いから、電車途中まで一緒
に帰ったりする。
行きの電車ではあうことはほとんどなかった、というのも雅之は部活で朝練が毎
日あるから私っよりずっと早いのだ。
「どうしたんだ? 最近元気ないよね」
教室前の階段のところで待っていた雅之が、私に向かってそう声をかける。
両親が親身になって私の話しでも聞いてくれればいいのだろうが、もともとそん
な話などできるわけもなく、いまは一週間ほどヨーロッパに旅行中。
娘の事なんかなにも考えてない。
もっとも私はそれほど落ち込んでいるわけでもない。
いつも気付かれないように元気を装っているのだが、それでも最近は特によくそ
う言われるようになった。
「んなことないってぇ、私はいつだって元気じゃない?」
自分でそう言うときに足が震える。
雅之がいなくなったら完全に、孤立してしまうかもしれないのだから…
「湧ちゃん、ちょっと来て…」
後ろから小百合の声がした。
振り向くと、後ろに加代子の姿もある。
なぜかにわかに視線が集まるのを感じて、恐くなった。
「あ、ごめん、今日は先、帰ってくれる?」
雅之にそう言うと、薄情なのかそれとも全然気にしていないからなのかわからな
いが、そう、といって帰っていった。
「……」
雅之がいなくなると、少し沈黙が襲った。
「なによあんたたち」
私がさきに沈黙に耐えきれなくなって二人にそう言った。
「湧ちゃん、加代子から聞いた。彼氏奪ったんだってね…」
小百合がそう言った。
静かに感じる階段は、男子や女子の声で本当はにぎわっている。
私にはそれが聞こえないだけ…
「なによ…」
一瞬、いま去っていった雅之に聞こえていないかと不安になる。
「ちょっとおじゃまさせてもらおうかなって思ってね?」
小百合がそう言った。
冗談じゃない、もう友達じゃないなら私が家に呼ぶわけなんて…
その時、小百合の手に持った鍵が目についた。
「それは…」
一瞬、そのキーホルダーをみて見間違いかと思った。
私のはさみの形のキーホルダーを、小百合がいつの間にか手にしていた。
「そ、一応言っておくね。後で行くから」
そんなことをいう小百合の手の鍵を奪いかえそうとした。
ゆっくり歩いていくと、小百合も一歩下がる。
「返しなさい」
私がそう言うと、ひっと加代子の体がひるむ。
「だーめ、とろうって思っても無駄だと思うな」
小百合は窓の方を向いてそう言った。
そしてこともあろうか脅しではなくて、窓から下にぽーんとそのキーホルダーを投
げたのだった。
焦る私が窓から下を見ると、下でおっけーとか言いながらキーホルダーをもった手
を振ってみせる由香の姿があった。
「どーする?」
なんて下から由香が言ってるのが聞こえる。
すると隣で小百合が
「私や、加代子に手だしたら、あの鍵捨てちゃうかも」
私の家に来てなにをしようとしているのかわからなかった。
さすがに通信簿をめちゃくちゃにされた私としては、鍵を捨てられでもしたら、こ
れから三日間路頭に迷うことになる。
なんとか返して貰わないと…
「いいじゃない、おじゃましても」

小百合と、加代子、そして由香ともう一人知らない男が私の家にやってきた。
「おじゃましまーす、ふふふっ、三日間たっぷり使わせてもらおうっと」
その四人が入った後、自分の家に入った。
中でいろんな者を勝手にいじくり回しているのをただ見ていた。
…のだが、勝手に私の部屋に入るなり、大切なCDを割ってみたりしだしたのをみ
て私はたまりかねた。
「ちょっと、勝手にいたずらしないで!」
大声でそう言った。
「ねぇ、あいつだれ? 知らないよ…、勝手に人に家に上がり込んでくるなんて、
失礼じゃない?」
小百合がそう言った。
「健一くんも、そう思うでしょ?」
その男のことを、由香がそう呼んだ。
それほど体育会系というわけでは無いような、どちらかといえばちょっと細身で、
強そうではない奴だった。
小百合はばりばりの体育会系だし、由香は頭が良くて優等生っぽくしてるけど私と
仲がよかった。加代子は、ちょっと明るくて気が弱いから…
「じゃない?」
ちょっと苦笑気味でその男がそう返す。
「縛り上げちゃえ!」
不用意なことを言った私はそのまま三人に襲われた。
その男は遠目に見ていたけど、さすがに私も三人がかりではどうすることも出来ず
に取り押さえられてしまった。
「テープとかないの?」
その言葉を聞いて愕然とした。
私を、縛り上げようとしているのは本当なのだ。
「探してこようか、多分あそこだと思うし…」
驚いたことにそいつはすぐに私の家の押入の中のガムテープを発見した。
小百合と由香に言われて加代子が、そのテープを切って、私の口の方にもってきた
ので、私はあわてて抵抗した。
だがしっかりと腰の上に小百合にのっかられて、両手を押さえられていて、両足を
由香に押さえられている私にはどうすることもできなかった。
「やめてっ、加代子、そんなもの張ったら後で…」
私の言葉に一瞬えっという顔をした加代子だったが、余計に煽ってしまったのか、
加代子はすぐガムテープで私の口を閉じた。
しかもその上から何枚もテープを貼られて、最後には、頭の後ろまで回されて頭を
ぐるぐる巻きにされた。
「うぐぅっ……んーー・・・・」
悲鳴を上げたつもりの声も全然声にならない。
暴れる私の足をそのテープでぐるぐるに巻かれて、その上、手の自由まで後ろ手に
そのテープでぐるぐるに巻かれたおかげで奪われてしまった。
「ねぇねぇ、湧ちゃんで遊ぶってのどう?」
由香が楽しそうにそう言い出した。
私は、その言葉を聞いても、逃げ出すことも出来ず…